WirelessWireNewsさんで紹介された記事に以下のような記事がありました。
CTRL+Xでカット、CTRL+Vでペースト。ショートカットキーの使い方を覚えると、パソコンの達人になったような気分になりますよね。
しかし、実際にはショートカットキーを使用すると、マウスでメニューから「編集」「ペースト」を選ぶよりも平均2秒も遅いのです。
Togが行った実験
これはTogことブルース・トグナッツィーニがAppleでMacintoshの開発を担当した際に行った膨大な実験の結果、解ったことなのだそうです。
複数のショートカットを使用し、様々な操作を要求されれば、そうなるのでしょうね。でも、ショートカットってよく使う操作を使い慣れたキーの位置でやるんですよね。
よくある操作を例に出せば、コピー&ペーストを多数やらなければいけないような状況。画像処理なんかなら最初にCtrl+Cに指をポジションしといてからマウスで位置を決定しますよね。ペーストはCの隣のVなのだから迷うことはないですよね。
テキスト操作ならカーソルキーで範囲選択しつつ、コピー&ペースト。いちいちマウスを握りなおしてメニューを開いていたら遅くてたまりませんね。
そして、なによりマウスの不正確性が問題です。もちろんキー操作でも誤操作はあるのですが、メニューを開いて視認し、「マウスカーソルをメニュー項目に動かしてクリック。」という動作と「指を隣のキーに動かして押す、戻して押す。」という動作。この2つの動作でミスを起こす可能性の高いものはどちらかは明らかですよね。
誤操作をしてしまうと、その数だけ修正に要する時間がかかります。でも、ショートカットなら?Cの隣の隣のZを押すだけで修正完了です。
ルーチンワークを必要としないような操作であれば実験通りなのでしょう。でも、ショートカットが重要になるルーチンワークで実験通りに遅いとはとても思えませんね。
体感時間とは?
そして、もうひとつ興味深い話が同様の記事にあります。
ほかにもTogは、Macintoshでテキストエディタを実装した際に、テキストをスクロールするときに1行ずつ更新して見せていたのですが、あまりにも遅いと評判が悪いため、1ドットずつスクロールするようにプログラムを書き換えたという経験を語っています。
当然、たとえばフォントの縦幅が16ピクセルならば、一行をスクロールするための処理速度は16倍も遅くなるはずですが、こちらのほうが「速く見える」ということでこの実装が採用されたといいます。
筆者の個人的な経験でも、こうした「実際には処理速度が落ちているのに速く感じる」効果というのをなんどか体験したことがあります。
この話と同じような体験を筆者も経験したことがあります。
膨大な入力コントロールのデータを読み込み、画面上に配置するといった仕様のプログラムを組んでいたときのことだったと思います。
データ入力用とコントロール表示のライブラリが遅すぎて表示に時間がかかり、クライアントには使いものにならず、なんとか早くするように要求されました。
全てを読み込み終わるまで、画面には変化がなく、操作も出来ない。そんな状態でした。
自分の組んだプログラムソースの中には、どこにも余分な計算やロジックはなく、どうにも早くする方法はありませんでした。
そのことをクライアントに告げると、ではプログレスバーを表示してくれと、要求されました。
プログレスバーを表示するには、進捗具合を計算する必要があり、余計な数値データや計算ロジックが追加されます。
当然、処理が増えるのですから遅くなります。
ところが、クライアントは「早くなった!なにしたんですか!?」言われたとおりプログレスバーを表示しただけで、早くなっていません。遅くなっています。
まとめ
つまり、どういうことかというと、人は「なにもしないで待つ」ということがすごく長く感じられます。そして、視覚表現上で動きがないとフリーズしているんじゃないかというような不安に駆られます。
プログレスバーがあるだけで、これを解消してしまうのです。プログレスバーをチェックして進んでいることが確認できる。この確認動作があるだけで早く感じられます。フリーズの不安にも駆られません。だって動いているんですから。
WirelessWireNewsのライターさんも、同様の経験をしているようで、このような話から体感時間と現実の時間のズレをiPhoneになぞらえたりして、最終的にはマウスとショートカットキーの話に置き換えています。そこについては少しややこしいので割愛します。
筆者としては、世の開発者の方たちに、こういう回避方法があるということを知っていただければ、それで満足です。
「大事なのは実際の実行速度よりも体感速度」
使うのは人間なのですから、「他人がどう見て、どう感じてくれるのか。」これを考えていただければ幸いです。
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