『毎日かあさん』漫画家の西原理恵子さんが朝日新聞デジタルに寄稿した《いじめられている君へ》

おもしろかったら友だちとシェアしよう!

『毎日かあさん』などで有名な漫画家の西原理恵子さんが朝日新聞デジタルに寄稿した記事が今、胸に刺さると話題です。

■上手にうそをついて

うそをついてください。

まず仮病(けびょう)を使おう。そして学校に行かない勇気を持とう。親に「頭が痛い」とでも言って欠席すればいい。うそは、あなたを守る大事な魔法(まほう)。人を傷つけたり盗んだりするのでなければ、うそって大事よ。これからも、上手(じょうず)にうそついて生きていけばいいんだよ。

《いじめられている君へ》西原理恵子さん | 朝日新聞デジタル ーより引用

いきなりのウソの肯定。でも、考えてみてください。読んで欲しい相手は「いじめられている子」なのです。

本当のことを言っても話半分にしか聞いてもらえず、頑張って状況を打開しろなどと人事のように言われることさえある。そんな子です。

亡くなった夫は、戦場(せんじょう)カメラマンでした。戦場で銃(じゅう)を突きつけられたことが何度もあったけど、一番怖(こわ)かったのは、少年兵だって。

大人は残酷(ざんこく)な兵士にもなるけど、家に帰ったらやさしいお父さんにもなる。愛することや大事なものを知ってるから。でも、少年兵は物事の重大さが分からず、簡単(かんたん)に人を殺しちゃうんだって。生前(せいぜん)にそう言っていました。子どもってそういう生き物。「子どもなのになぜ?」って思うかもしれないけど、戦場の理屈(りくつ)だと、そうなんだって。

いくら紛争地帯(ふんそうちたい)でも、年間3万人も死ぬことはそんなにありません。でも、日本ではそれくらいの人々が自殺しています。そう、この国は形を変えた戦場なんです。戦場では子どもも人を殺します。しかも、時には大人より残酷になる。

《いじめられている君へ》西原理恵子さん | 朝日新聞デジタル ーより引用

子どもは、いろんなことをまだ知らない、ゆえに残酷になることもある。

そんな子どもたちの中で、その子は「いじめ」にあっているのです。

学校は、いじめられてつらい思いをしてまで行くようなところじゃない。長い夏休みだと思って、欠席してください。そして、16歳まで生き延びてください。

高校生になれば、通信制(つうしんせい)高校やフリースクール、いわゆる大検(だいけん)など選択肢(せんたくし)が広がります。何よりもアルバイトができる。お金をもらいながら、社会人にふさわしい訓練(くんれん)を受けられます。お金を稼(かせ)ぐということは自由を手に入れるということ。その先に「ああ、生きててよかった」と思える社会が必ず待っています。(さいばら・りえこ=漫画家)

《いじめられている君へ》西原理恵子さん | 朝日新聞デジタル ーより引用

勉強はその気になればひとりでも出来ます。共同生活も大人になれば嫌でもするようになる。そして、大人は共同生活の場を選ぶことだって出来る。

ですが、子どもは自分の責任で共同生活の場を選ぶことは出来ません。危険に身をさらすぐらいならばウソをついてでも生き延びろ、ということなのだと思います。

大人が歩み寄ることばかり考えがちな「いじめ問題」ですが、子どもが自力で生き延びることを応援する。

もっと早くに、この文章が広く知られていたら、子ども同士の問題で亡くなった子たちにも別の未来があったのかもしれません。

出典
朝日新聞デジタル