まずは、こちらの動画の楽曲を聴いてください。
初めての楽曲動画投稿
これは2007年に当時中学2年生だった黒魔さんというクリエイターがニコニコ動画にお兄さんに言われ投稿したものです。楽譜が読めなかったため、手探りで入力しては実際に音を鳴らし、原曲と比べながら作ったそうです。
プロのクリエイターから見れば、何も知らない技術もない中学2年生が作ったにしては上出来ともとれる作品なのですが、ニコニコユーザーたちの目にはそうは映りませんでした。
リズムもボリュームバランスも音色の使い方もひどい有様で、それを笑い飛ばしました。ですが、「ゲーム」カテゴリのランキングで1位を獲得するほど大人気に。原曲にとらわれていない部分がニコニコユーザーには滑稽に映ったのでしょう。
ところが、黒魔さんにとってはこれが吉とでます。
「F5を押すとコメントや再生数がどんどん増えていくのがすごく面白かった。」
笑われてヘコむどころか、人気になったことを面白いと受け取りました!
努力が才能に転化
その後も音楽を作り続け、高校時代の夢はゲームのサウンドクリエイター。「1年に100曲作ろう」と決めて実際に作った年もあるそうです。曲作りはすべて打ち込みで、楽曲動画の背景イラストも自分で描き、彼の活動は音楽だけに留まりませんでした。
VOCALOIDにもハマりお年玉を貯めて購入し、ボカロ曲も作り始めました。
もはや同一人物の作品とは思えないほど上達しています。今度は実力で人気となったようです。
ニコ動に投稿した作品の中で、“耳コピ”シリーズに次ぐ再生数を獲得した「ラストバトル」は、人付き合いが苦手で悩んでいた時期に、「悩みとかモヤモヤを全部出そう」と作った曲。予想以上にたくさんの人に共感してもらえたと喜ぶ。
そして、電子系専門学校の音楽関連学科を20歳で卒業しフリーランスとして独立したそうです。
プロとしての活動へ
2014年8月には上京し、都内の友人と一緒にルームシェアしながら毎日、曲作りにいそしんでいます。
「本当に勢いだけで、貯金もまったくない状態で上京したんです。好きなことができるフリーの立場なのに、地方にいるためにできないことがあるのがすごく嫌で。DTM(デスクトップミュージック)というインドアな趣味をしながら、変にバンドマンっぽい勢いがついてしまって(笑)」
現在では個人でアルバムを作ったり、同人CDやゲームに曲を提供しているほか、メジャーレーベルのボカロCDに参加したり、スマートフォン「Xperia」の初音ミク版「dx39.net Xperia feat.HATSUNE MIKU」に楽曲が採用されるなど、企業にも作品を提供しているそうです。
そんな黒魔さん、今後はどうしていきたいのかを、こう語っています。
「でっかい人間になりたいです。みんなからスゲ-って思われるような……いや、思われなくても、自分の中で納得できるぐらいスゲー曲を書けるようになりたいです。自分にコンプレックスを抱えている部分もあったので、自分に自信が持てるような人間になりたくて」
「もうけようと思って東京に出てきたわけでは全くないです。いろんな人と話したりつながって、面白いことをやりたい。今は音楽しかないので、やれるところまで音楽をやりたいですね」
本当に音楽作りが好きで、独学で勉強をし、さらに専門学校で専門知識を身につけてプロとしての活動を始めても未だに音楽を愛することに対して翳りがみえません。もちろん、これまでに葛藤する時期もあったようですが、それでも、やれることを全力でやり続ける姿勢はかわらないようですね。